2020-03-27T21:58:28Z #014 東赤谷連続洞門

#014 東赤谷連続洞門

紆余曲折の歴史を辿った鉱山専用軌道、そして軍需に沸いた戦略物資輸送線としての顔。美しい景観とは裏腹に数々の運営譲渡を繰り返した日鉄鉱業赤谷鉱山専用線と、その後二次利用としての連続洞門をご紹介します。現在も残る鉱山跡へ続く大迫力の廃橋と併走するスノーシェードを撮影しました。

スゴログ 東赤谷連続洞門 隧道
新潟県│東赤谷連続洞門

調査:2010年07月
再訪:なし
公開:2010年06月29日
名称:正式名称→新潟県道335号滝谷上赤谷線
状態:行政管理

お詫び

2010年にこのスノーシェードを「東赤谷連続隧道」として公開し、沢山の人にその名前で慣れ親しんで頂きました。旧サイトのレポートがキッカケでこの地を来訪される方も実に多くいらっしゃると聞き及んでいます、また幾つかの出版社様へは写真などの提供もさせて頂いた記憶に残る物件となっています。

しかし2015年、公益社団法人土木学会の関係者より、



この区間における建造設置目的はスノーシェードであり、掘削隧道ではないので呼称名を”洞門”と改めた方がより正確なのではないか。



とご意見を頂きました。よって公開より8年の歳月が流れてしまいましたが物件名の変更を致します、この区間における物件名はこの再掲載されたレポートより

「東赤谷連続隧道」改め「東赤谷連続洞門」と致します。

旧サイトでの掲載以前は全くとウェブ上に情報がなく、来訪者もダム関係者のみでしたが地元の方からも来訪者が増えたと嬉しい連絡を頂きます。これからもこの美しい「連続洞門」が沢山の方の思い出の地となる様、心より願っております。

注意点
既に収拾が着かない程に「東赤谷連続隧道」の名が氾濫してしまいました、もしこのページに気が付いた方がいらっしゃいましたら順次「洞門」と改めて頂きたく思います。

それでは以下より2010年公開時のレポートとなります。


ダム関係者しか知らない美麗なスノーシェード

新潟県にとても魅力的な隧道群が在ると聞いた、何でもそこには廃鉱山へ続く素晴らしいスノーシェードが連続で続いていて訪れる者を圧倒するのだとか。

その場所とは新潟県の山中、三川温泉を北上した新発田市の滝谷。全く知らない場所だったので少々調べると古い鉱山跡が在ったと書かれていた、この様な場所に訪れるのはダム関係者か鉱石コレクター位だと言う。

鉱山名は飯豊鉱山、赤谷鉱山など複数の名称で呼ばれているがどうやら赤谷鉱山で正解の様だ。

この廃鉱山に向かうには新潟県道335号線を加治川冶水ダム方面へ、暫く山道を走ると洞門群が姿を現すのだと下調べで判明していた。廃鉱山へのアプローチ随分と苦労すると鉱石コレクターさんのサイトで情報を得いてたので今回はこの洞門群を見に現地を目指す事にしたのでした。

注意点
今回のレポートでは日鉄鉱業赤谷専用線、赤谷鉱山などに関する資料引用や詳細なレポートは記載しません。あくまで洞門群のご紹介に徹しております。

スゴログ 東赤谷連続洞門 隧道

連続洞門の正体は鉱山専用軌道

国土地図で場所、数、長さなどを事前に確認しておいた。山中を切る新潟県道335号線を暫く走ると信号機が付いた1車線の洞門が姿を現す、どうやら件のスノーシェードの様だ。

しかしこれは美しい、いや本当に綺麗だ。

ただ気に成る点もある、何故か天井だけ黒く煤けている様に見えないだろうか。そう、この洞門…実は当初の建造目的は日鉄鉱業赤谷専用線の軌道洞門なのです。つまり、天井の黒い部分は本当に煤けているのです、勿論その理由は蒸気機関の煙による物。

洞内高が通常の道路より高い事も機関車が通過する為に必要な空間を確保する為、単線だったので道路幅が狭い事も納得です。

スゴログ 東赤谷連続洞門 隧道

他にも日鉄鉱業赤谷専用線だった名残がこの連続洞門にはあります、と言うよりこの軌道上全てに言える事なのですが。

車と違い、機関車の全長はとても長い事はご存知かと思います。更に貨物車両が連結されていますから総全長はなかなか迫力があったと思われます。

カーブには各車両の全長と連結間隔によって曲がり切れる角度の限界が有るわけでして、つまりこの道路においては鋭角なカーブは存在しないという事なのですね。

飯豊川橋梁手前の道路は急カーブではないかとおっしゃる方も居るかもしれませんが本来の軌道は専用鉄橋(飯豊川橋梁)へ導かれます、なので日鉄鉱業赤谷鉱山専用線としてはほぼ直進しているのです。

スゴログ 東赤谷連続洞門 隧道

それ以前より赤谷鉱山の鉱山採掘運営はされていたが1941年、紆余曲折あって運営権が日鉄鉱業へ引き継がれて鉱山軌道が日鉄鉱業赤谷専用線として開通。

このスノーシェードも1940年から1941年()に掛けて建造され、現在迄77年(2018年現在)もの間その姿を残している。世は第二次世界大戦の最中、この鉱山も軍需に栄えた悲しい歴史を持っているのだろう。

注意点
鉱山軌道自体は1922年より運用されており、日鉄鉱業赤谷専用線として全線開通したのが1941年というやや面倒な歴史を辿っています。

スゴログ 東赤谷連続洞門 隧道

日鉄鉱業赤谷専用線として運用されたこの軌道ですが実は飯豊山の登山客を運ぶ観光交通機関としての顔も持っていた、どうにか当事の写真が入手できないか四方八方手を尽くしたが発見に至らず…もし資料などで写真をお持ちの方がいらっしゃいましたら是非ともご一報願います。

注意点
登山客が日鉄鉱業赤谷専用線の機関車に乗車している写真を探しています

スゴログ 東赤谷連続洞門 隧道

普段であればダム関係者しか通過しない山深い道、この場所が戦時中は何千何万もの人と鉱物資源を頻繁に運んだとはとても思えません。

飯豊川橋梁の両岸には当事鉱山関係の倉庫が在ったと思われる空き地やブッシュを越えると本来の軌道跡が残っていたり、なかなか飽きさせない場所でもあります。

更に両岸に鉱山への作業道が残されていて今でも来訪する事が可能です、しかし付近は地形的にも非常に危険な場所でもあるので準備に怠り無く来訪されて下さい。

スゴログ 東赤谷連続洞門 隧道

暫く撮影しながら歩いているとふと斜面を下る獣道を発見、何か匂うとばかりに歩を進めてみた。

スゴログ 東赤谷連続洞門 隧道

思いがけない絶景に唖然としながらも靴下を脱いで素足を浸けてみる、真夏だと言うのにとても冷たい清流に身が引き締まります。

沢装備があれば上流へ行ってみたい気もしますが今回は別件撮影も控えていたので泣く泣く引き返す事に、取り敢えず軌道上の目玉とも言える「飯豊川橋梁」へ向かいましょうか。


専用軌道のシンボルだった橋梁跡

加治川治水ダムへ進み、本来の日鉄鉱業赤谷専用線が通っていた「飯豊川橋梁」が見えてくると景色がやや変化します。

スゴログ 東赤谷連続洞門 隧道

開けた谷に掛かるこの鉄橋こそ1957年()まで長く鉱山を支えた鉱山軌道の重要建築物、飯豊川橋梁です。全長は47.4m、軌道使用が終了してからは道路橋として暫く使用した様でその際にレールなどは撤去されている。

道路側の橋はその間々「飯豊橋」と名付けられています、1970年3月竣功。

注意点
鉱山運用は1980年代まで継続して行われていました

スゴログ 東赤谷連続洞門 隧道

道路使用された際はこの枕木が敷き詰められ、更に木道の様な底板が敷かれた様だがその時代を撮影した写真や資料もないので確証は持てない。だがこの橋の上を車が走ってたのが事実ならばそれはそれでなかなかなと面白い画だったに違いないだろう。

それでは渡ってみましょう。

注意点
非常に危険です、安全器具などを使用しない渡橋は自殺行為かと思われます。実際現地に赴けばこの橋を渡ると言う事がどれだけ危険か判断して頂けるものと信じております。

スゴログ 東赤谷連続洞門 隧道

中央まで来てみた、歩きが不安ならば不恰好だがハイハイの様な状態でも進んで行けた。渡りきってから気付いたが実は飯豊橋手前からブッシュを少し濃いで斜面を下ると同じ場所へ到達出来る、つまり渡る必要性は全く無かったのだ。

そして渡ったところで何も残存せず、帰りは勿論道路に直接アプローチしました。

この付近には他にも鉱山後や鉱山関係の廃棄場所、極僅かな遺構などが残っていますが見付けるのは用意ではありません。またそれぞれの遺構が離れた場所に在る為に途中車移動なども必要となるでしょう、鉱石などに興味があれば自己責任の上で十分な装備を整えて行動して下さい。


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日鉄鉱業赤谷鉱山専用線

国鉄赤谷線(鉱山延長路線)として東赤谷から鉱山に伸びる鉱山専用線、赤谷線自体は鉄鉱石の輸送を目的として建設され、1922年12月に新発田~赤谷間が開通しました。

しかし鉄鋼関連の資材価格が下落した事を受け、全線開業の予定が延期されます。3年後の1925年、通常の路線として人を対象とした運行が開業し、第二次世界大戦中の1941年に戦略物資の確保を目的とした鉱山再開を受けて鉱山延長線を含む全線開通と至った様です。

1960年代後半から全国の鉱山が閉山し、1980年代後半には長い歴史に終止符を打つ事に。同時期、有名な足尾鉱山も閉山した事を考えると本当に鉱山関連事業がバブル期に次々と閉山した事が解ります。

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参考・協力

新発田地域振興局 地域整備部
新発田市役所



レポートの場所


注意点

該当区域は管理されており、無断での進入する事は法律で禁止されています。また登山物件においては事前にルートの選定、充分な予備知識と装備で挑んでおります。熟練者が同行しない突発的な計画に基づく行動は控えて頂く様、宜しくお願い致します。

スゴログの装備とその使用方法など
https://www.sugolog.jp/p/blog-page.html



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