2019-11-21T05:01:58Z #027 霊仙 今畑集落

#027 霊仙 今畑集落

霊仙廃村群の中では実は多くの人に知られた存在である今畑集落、それは登山道へのファーストアプローチに使われるルートの脇に残されているから。同様の廃村群の中で唯一車道などの近代化整備が行えなかった地理的条件とそれでいて離村時期は一番遅いという矛盾したこの集落の歴史に触れることにしましょう。

スゴログ 今畑集落 廃村
滋賀県│今畑集落

調査:2010年06月
再訪:2010年10月 / 2011年05月 / 2012年7月
公開:2010年11月09日
名称:正式名称→今畑集落
状態:長期間放置

旧サイトで複数回に分けて公開していたレポート内容を2012年現在の調査内容に統合して再エントリーしました。また古くなった情報などは精査して削除しております。



スゴログ 今畑集落 廃村

現在でも登山口として人の往来が頻繁な廃集落

霊仙山の登山道入口に位置する今畑集落、元々登山道が生活道路や山岳産業の主要ルートとして機能していた時代から村を形成していました。前回紹介した入谷集落も斜面にへばりつく様に集落が作られていましたがこちらはもっと急斜面です、本当に限られた平地に数軒の家屋が在ったようです。

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この地理的な条件の為に車道整備は行われず、というより行うことができなかった為に近代化の為のインフラ整備が進まず廃村化しました。ですが面白いことに霊仙の敗訴群の中では離村時期が一番遅い1998年、行政が住民人口0人を確認したのは2000年を迎えようかという世紀末だったのです。

ただもう少し詳しく調べてみるとこれはあくまで行政確認のデータであり、正確にはその大分前には最後の住人が転居していて引越し後の整理などで住宅跡に出入りしていただけのようでした。


繰り返しますがこの廃村は登山道脇に残されている為に今でも沢山の人の目に止まっているようで登山レポートにも度々登場しています、人の往来が頻繁ではありますが登山道ゆえに整備は最低限で雨の後などはマディで非常に歩きづらく来訪には注意が必要です。

また今畑集落も入谷集落同様に集落入口の道路を挟んで倉庫群が見てとれます、中身はやはり入谷集落と同じで元住民が使用していた山岳産業に関係する道具が残されています。

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登山道入口から回り込むように勾配がキツイ登りが続きます、壁側には不揃いな原始的な石垣や岩肌を削った如何にも山岳集落への道といった風景が。旺盛時にはリアカーなどが通ったとの記録もありますが原状を見るにとてもそんな車幅が整備されていたとは思えません。

注意点
近年までは行政が積極的にこの登山道を整備することはありませんでした、故に現在でもこのような獣道の状態で残されていますが最低限、倒木の除去などは行われているそうです。遭難するようなルートではありませんが滑落の危険性は散見できます。

この山道の下方斜面側には小さな農耕地跡が見られたので生活の為の自家栽培なども行われていたのかもしれません、これに関しては行政からの正確な回答も得られなく書籍にや資料にも記載は見受けられず断言はできませんが。

スゴログ 今畑集落 廃村

集落の現存建造物は殆ど皆無

山道入口から10分ほどで集落入口に到着した、この場所で道は二手に分かれて集落側と登山道側とで趣が大きく変わる。

登山道は今までと同じ簡素な整備の細い道が続くが廃村内は更に酷い獣道のような踏み跡が数本各家庭へ向けて延びていた。

集落入口には水場小屋が今でも残っていて湧水も潤沢だ、各家庭にも小さな井戸は確認できましたが厳しい立地条件の今畑集落においてこの水場小屋は非常に大切に管理されていたと予想できる。

このようなパブリックな水場は集落においても旅人においても、また産業道路を利用した行商人なども命を救う水となり得ます。その位この今畑集落は人が住むには不釣合いな場所に形成していたのです。

注意点
緊急時の水の確保は山岳内において特に優先されることで火事、自然災害はもとより集落に住む人々にも何かと入用だったと思われます。

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倒壊家屋の跡、時間経過と風化で人が介さずとも管理を離れた建造物は比較的容易に倒壊してしまう。それが通常の平地とは異なる立地条件なら尚のことだろう。、最盛期には17軒程の家屋が在ったが現在ではその殆どが崩壊倒壊して残り数軒を残すのみとなってしまった。

住民の姓は「藤井」・「鹿野」・「辻村」の3つ、やはり霊仙廃村群ではダントツの家族筋を有していた「藤井姓」がここでも顔を覗かせる。そう、この地域はこの藤井姓がとても多いのです。今後のエントリーでご紹介する一帯の廃村群でもこの苗字は度々出てくることになります。

注意点
残念ながら今畑集落に現存する家屋はありません(半壊家屋は現存)


霊仙廃村群における藤井姓とは

余談ですがこの「藤井」と言う姓、少しだけ解説したいと思います。苗字の解説サイトによると、

百済帰化族藤井宿禰の子孫。清和天皇の子孫で源姓を賜った氏(清和源氏)、中臣鎌足が天智天皇より賜ったことに始まる氏(藤原氏)秀郷流、利仁流などにもみられる。語源は、藤の木のもとに井戸がある所との意味や、藤にゆかりの地の意味がある。藤居。藤は、山野に自生する葛のこともある。

とのこと。なるほど、他の廃村でしかも山岳集落に何かと「藤井姓」が多いのはこの”藤は、山野に自生する葛のこと”というのが大きいのかもしれません。しかも井戸のくだりも十分納得できる由縁でしょう、一般的な古い集落だと井戸は村で一つであることが多い。また区画分けされた箇所に設置されており、重要な存在だったことは間違いありません。

なぜそれだけ重要視されているのかといえば先程も少しだけ既述しましたが山岳地域における水源は麓から広がる平地に居住する人々に至るまで命の源といっても過言ではありません。山間部でも平地においては地質学的な要因で”そう”であることは想像に難しくはありませんが山深い今畑集落や類似するこの一帯の集落ではどうだったでしょうか。

降水量も多く、潤沢な水源が多く有していたこの一帯。山岳集落形成の初期段階で先程のエピソードを踏まえれば「藤井」という姓が多いことも頷けるような気がします、つまりこの廃村群においては水源を労せず確保できた人々のもっとも一般的な「姓」だったのでしょう。

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廃村時期を更に詳細に調べ、麓の多賀町の方の聞き取り(農家などを中心に実施)した結果正確ではないもの1979年には住む人がいなかったのではないかと思われる。行政確認から20年も前だ。

そうであるならば一帯の廃村群とそんなに時期を逸することなく離村したことになる、更にこの荒廃状況を鑑みればそれも納得といえる。

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ウィキペディア - 名古屋牛乳
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三種の神器と謳われたのも昔、電化製品に限らずプラスチックを利用した製品が廃村で自然に還ろうと頑張っている姿を度々目にします。バクテリアの種類や土壌環境などでかなり時間差はありますが最低でも1000年以上の時間が必要なのは確かです、現在ではこんなプラスチックが。

ウィキペディア - 生分解性プラスチック
http://archive.is/CfUGE

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今畑集落は廃村化してから長い時間が経過していますが人の往来も多く、また浄土真宗本願寺派の宗金寺の手入れが定期的に行われていることからも沢山の方の記憶にとどまり続けている場所でもあります。

またこの地域の歴史を紐解く重要な要因として歴史的価値もあるでしょう、更に見聞を広げたいと思い行政関係者から紹介されて「多賀町立図書館」へ。

その図書館に所蔵されている芹谷霊仙分校の百周年記念誌「芹霊」を拝見させて頂きました。その中の「同窓生名簿の今畑の欄に住民の名前が並んでいました。1970年代後半まで記載されているので廃村時期はやはり1979年(頃)で間違いないのでしょう、ならば現在でも元住民の方を探す事は難しくなさそう、叶うならば元住民の声を生でお聞きしたいところですがそこまでするのは野暮かもしれません、書籍や資料で追加情報がありましたらその都度掲載させていただきます。

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参考・協力

彦根市役所
多賀町役場
多賀町立図書館
多賀大社
一般社団法人多賀観光協会



レポートの場所



注意点

該当区域は管理されており、無断での進入する事は法律で禁止されています。また登山物件においては事前にルートの選定、充分な予備知識と装備で挑んでおります。熟練者が同行しない突発的な計画に基づく行動は控えて頂く様、宜しくお願い致します。

スゴログの装備とその使用方法など
https://www.sugolog.jp/p/blog-page.html



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